【読書】C・J・ボックス『暁の報復』創元推理文庫

 C・J・ボックス『暁の報復』創元推理文庫を読了。
 僕が愛してやまない「猟区管理官ジョー・ピケット」シリーズの最新刊である。
 『嵐の地平』でエイプリルに大けがを負わせたダラス・ケイツが刑務所から出所した。そのケイツが町に現れ、ピケット一家に対する復讐を計画しているのを盗み聴いたデイヴ・ファーカスからジョーの留守電に警告のメッセージが入るが、ファーカスは惨殺死体となって発見される。その犯人としてケイツが逮捕されるものの、確実に有罪が確定すると思われた裁判では予想だにしなかった展開が。次々と一家に襲いかかる危機。はたして、ジョーは愛する家族を守り切ることができるのだろうか?
 シリーズ作品ならではの驚愕の展開がいろいろと待ち構えている。まさか、あの人物が再登場しようとは! そして、今回も仕事のために与えられている車をオシャカにするのだろうかと思っていると、そんなものではない災厄に襲いかかられて愕然とさせられる。
 とにかく、今回も抜群の面白さ。ページをめくる指がとまらない。前作が大規模テロを計画している組織が題材だったり、娘のシェリダンがありえない偶然で事件に巻き込まれたりして、いささか首をかしげる箇所がないでもなかったのだけれど、本作は完全にこのシリーズの本道ともいうべき路線に戻っている。シリーズのファンなら随喜の涙を流して喜べる作品であることは間違いなし。いやあ、面白かった。
 多くのシリーズは、長く続くとだんだん魅力が失われていったりするものだけれど、本作はシリーズ17作目でありながら、まったくワンパターンに陥らず、高いレベルを保ち続けている。幼かった娘たちが、どんどん成長しているのも、本作がワンパターンに陥らずにいる大きな要因かもしれない。彼女たちが、これからどういう大人になっていくのかも、実に楽しみだ。
 もちろん、今回もネイト・ロマノウスキが登場して、ジョーのバックアップにまわる。相変わらず躊躇のないネイトの行動にニヤリとさせられるのだけれど、プライベートではいささかストレスが溜まってきているようで、こちらも今後の展開が気になる。

 2月にあった東京創元社の「新刊ラインナップ説明会2024」に行った際に、翻訳ミステリー担当の編集者の方に「C・J・ボックスのジョー・ピケット・シリーズを引き継いでいただいてありがとうございます」と声をかけ、「なかなか最新刊に追いつかないので、翻訳家の方の尻を叩いて、もっと速いペースで出してください」と頼んだのだが、今回の「訳者あとがき」を読むと、来年は2冊の邦訳刊行が決定したとのこと。自分のお願いを聞き入れてくれたというわけではないだろうけれど、なんとも嬉しいかぎりだ。