【読書】マーク・グリーニー『暗殺者の屈辱(上下)』ハヤカワ文庫NV

 マーク・グリーニー『暗殺者の屈辱(上下)』ハヤカワ文庫NVを読了。
 暗殺者グレイマンことコート・ジェントリーは、ロシアからの金の流れを明らかにすることのできるデータを収めたiPhoneの確保をCIAから依頼されて動き出す。本来ならCIAから追われる立場のジェントリーだったが、自由と引き替えにその依頼を受けたのだった。しかし、そのデータは、ロシアのみならずCIAの上層部を含む多くのアメリカの高官をも壊滅させる内容を含んでいた。CIAが必死にそのデータを回収しようとするのは、国を守るためではなく、上層部の保身のためであった!
 一方、いまはフリーランス工作員となっている元ロシア対外情報庁の将校だったゾーヤ・ザハロワも、同じデータ端末を確保する依頼を受けて動いていた。こちらの依頼主の大元はロシアだ。しかし、そのデータの内容を知り、依頼を裏切ってiPhoneを所有する人物の保護にまわる。
 次から次へとジェントリーとゾーヤに襲いかかる危機また危機。そして、ついにふたりが再会した瞬間、衝撃的な事態が発生するのだった!
 相変わらず、濃密な読書時間を楽しむことができた。マーク・グリーニー、次から次へと新作が出るわりに、まったくテンションが落ちることはないし、ワンパターンに陥ることもない。特に本作は、CIAがロシアの情報機関と手を組んで、アメリカ人を殺害してまわるような鬼畜な展開に驚愕させられる。そこまでやるのか!
 また、ゾーヤ、スーザン・ブルーアといったシリーズの常連メンバーをめぐる新しい展開があり、そこも本作の見逃せないポイントとなっている。
 マーク・グリーニー、グレイマン・シリーズも続きが待ち遠しいけれど、『アーマード 生還不能』も早く続きが読みたいし、本当に凄い作家だ。