サイモン・モックラー『極夜の灰』創元推理文庫を読了。
北極圏にある米軍の極秘基地で発生した火災で隊員2名が死亡。精神科医のジャックは、軍に依頼されてただひとりの生存者コナーに対する聞き取りをおこなうのだが、顔と両手に重度の火傷をおったコナーは、事件当時の記憶を失っていると主張する。だが、そのことに疑問をもったジャックは、コナーに対する聞き取りを継続すると同時に、背景を知る人物たちへの調査も開始するのだった。その結果、明らかになった事実とは……。
夜の明けない北極圏の地下に建造された、氷に覆われた極秘基地というきわめて特殊な舞台で発生した事件を追うと、徐々に事件の状況が明らかになっていくのだが、その真相に迫ろうとするたびに何者かが主人公を襲い、さらには真相を知る者が殺害されていく。その過程はなかなかにスリリングだ。ただし、自分はこの小説を冒険小説と思い込んで読んでしまったのが間違いだった。冒険小説的な活劇シーンを期待して読んでしまったのだけれど、そういう期待はいっこうにかなえられず、ラストシーンもあっさりしすぎて拍子抜けしてしまう。舞台設定が舞台設定なので、てっきり冒険小説を思い込んでしまったのだけれど、帯には「意外性抜群の極上ミステリ!」とあって、どこにも冒険小説などとは書かれていないではありませんか。