【映画】ソード・ウォリアーズ 皇帝の剣闘士

 ベトナム発のアクション映画『ソード・ウォリアーズ 皇帝の剣闘士』を観る。英題は「Once Upon a Time in Vietnam」。なんとも不思議な映画だ。
 舞台となるのは、最終戦争後の荒廃した世界。かつて戦争で国が滅びかけたとき、戦士として国を守った僧侶たちがいた。彼らは戦争終結後も聖職には戻らず、皇帝の戦士として存続し続けた。彼らは鉄の掟によって縛られ、組織を裏切ったり、脱走した者には死が宣告された。
 ダオは、その皇帝軍にあって、脱走した者を探しだし、処刑する役目をになっていた。だが、今回彼が見つけ出したのは、かつての恋人のアンだった。9年前に組織を抜け出したアンは、いまでは小さな村でパン屋を営む夫とひとり息子とともに暮らしていた。ダオはアンを連れ戻そうとするが、この9年間が自分の人生でいちばん幸せな時間だったと言うアンに対して強く出られない。だがそこに、アンを処刑すべく皇帝軍の殺し屋が送り込まれてくるのだった。
 世界設定はちょっと『マッドマックス』っぽい。だが、それでいて中世風でもある。なにやら異世界ファンタジーのような雰囲気も漂っている。激しいアクション描写は香港映画っぽいが、『マトリックス』ぽくもある。敵対するふたりが道で距離をおいて対峙する場面などはまるで西部劇である。ラストシーンなどは、もろに『シェーン』だ。
 アクションは意外と見ごたえがあった。不思議な形をした剣でのバトルが中心となるが、ワイヤーワークもたっぷりとあり、しかもCGも多用している。なにより、俳優の身のこなしがきれいで、観ていて惚れ惚れとしてしまう。
 登場人物の内心を過剰に語らず、最小限の描写にとどめるどころか、必要な説明すら削りかねない演出も魅力的だ。なんども主人公にからむ村娘がいるのだけれど、彼女が何を考えているのか、まったく説明がない。なかなか魅力的な表情を見せる女優が演じていたのだけれど、彼女はいったいなんだったのだろう。
 監督・脚本・主演はハリウッドでも活躍しているベトナムアメリカ人のダスティン・グエン。
 アンを演じているのは、『CLASH クラッシュ』『ハイ・フォン: ママは元ギャング』『ザ・クリエイター/創造者』などのゴー・タイン・ヴァン。きりっとした気の強そうな美人で、しかもアクションがめちゃくちゃかっこいい。
 皇帝軍のロン将軍を演じているロジャー・ユアンは、『シャンハイ・ヌーン』『バレットモンク』『チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ』といった作品に出ている。
 というわけで、ベトナム映画といいながら、なかなか国際的に活躍しているメンバーがからんでいる作品で、国籍不明のなかなかに面白いアクション映画となっていた。