【映画】セリーナズ・ゴールド

 フィリピン映画『セリーナズ・ゴールド(Selina's Gold)』を観る。
 1942年。ルソン島北部の貧しい農村地帯。
 17才になるセリーナ(アンジェリ・カーン/Angeli Khang)は、借金をかかえた父親(ソリマン・クルーズ/Soliman Cruz)の手によって、土地の実力者であり金貸しでもあるティアゴ(ジェイ・マナロ/Jay Manalo)に売り飛ばされてしまう。セリーナはティアゴの性の奴隷となり、生き地獄へと落とされるのだが、次第に積極的になっていくセリーナによって、彼女の存在はティアゴの中で徐々に大きなものとなっていくのだった。
 一方、セリーナ同様、幼い頃にティアゴに売り飛ばされて奴隷のような扱いを受けてきた盲目の若者ドメンに同情したセリーナは、ティアゴの目を盗んでドメンに性の歓びを教えるのだが……。
 相も変わらずのビバフィルムのエロチック映画である。権力を持った最低の男を演じたらフィリピンいちのジェイ・マナロが、相変わらず憎々しいキャラクターを演じていて、アンジェリ・カーンがこの男に好き勝手にもてあそばれるシーンは、とことん嫌悪感しかない。それが、徐々にセリーナによって手玉にとられるようになっていくという展開が本作のキモなのだろうけれど、だからといって本作が面白くなるというほどでもない。ひとつだけ、ちょっとびっくりするどんでん返しが用意されていて、それがなければ本当に救いようのない映画としか言いようがない。ま、この手の女性が陵辱されるシーンを好むごくごく一部の層には支持される作品なのかもしれないけれど。
 あと謎なのが時代設定で、日本軍がルソン島北部にも徐々に押し寄せつつあるという設定がまったくもって生かされていない。突如としてズタボロになった日本兵が現れて、日本刀を抜いて「バカヤロー」と叫びながらドメンに襲いかかる場面があるのだけれど、この日本兵がなんでたったひとりでこの村に現れたのかは不明なまま。冒頭ではナレーションとして戦況が説明され、途中でも日本軍が近づきつつあるというラジオ放送が挟み込まれていたりするのだけれど、それがまるっきり生かされていない。これで最後に日本軍が押し寄せてきて、すべてが灰燼に帰すというような展開になれば、それなりにインパクトのある映画になっただろうとは思うのだけれど。
 主演のアンジェリ・カーンは、あどけないロリ顔と、過激なセックスシーンとの落差ゆえの人気か、ビバフィルムのエロチック映画にやたらと出まくっている。今までには『Mahjong Nights』『ヴァージンフォレスト 愛欲の奴隷(Virgin Forest)』『GIRL FRIDAY』といった作品を観ている。どれもエロチック映画なのだけれど、我ながらよく観ているな。
 ジェイ・マナロは、観るだけでうっとうしく思えてしまうほど濃い顔つきの男優で、とにかく権力をかさにきて女性をもてあそぶという役が多すぎる。正直、彼が出てくるというだけで、その映画を観る気力がなくなってしまうほど、ワンパターンの役ばかりを演じている。本人が望んでそういう役ばかりを演じているわけでもないのだろうけれど、完全にイメージが定着してしまっている。
 監督のマック・アレハンドレ(Mac Alejandre)は、ラモン・ボン・レビリア・ジュニア主演の『Ang panday』『Ang panday2』という大作を撮っていた監督でもあるのだけれど、最近はビバフィルムのエロティック映画を量産している監督となってしまっている。