【映画】ドラキュラ デメテル号最期の航海

 『ドラキュラ デメテル号最期の航海』を観る。
 ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の第7章「デメテル号船長の航海日誌」を映画化したものとのことだけれど、『吸血鬼ドラキュラ』を読んでいないのでぜんぜんそんなこととは知らなかった。これを機会に読んでみたいと思うのだけれど、いま読むのだったら光文社古典新訳文庫がいいのかな?
 映画は、謎の木箱を積んだ船上で、家畜が何者かに首を食いちぎられ、それに続いて乗組員がひとり、またひとりと謎の存在に襲われて死んでいくというもの。その謎の存在とは当然ドラキュラなのだろうけれど、ドラキュラという名前は出てこない。乗組員にしてみると、なにか超常的な化け物が船のどこかに潜んでいて、仲間が次々とその餌食になっているという状況でしかない。逃げ場のない閉ざされた空間で、どこからともなく現れた化け物に襲われるという恐怖は、例えば『エイリアン』などにも通じる怖さがある。
 また、安っぽいB級、C級ホラー映画と違って、映像が重厚で、ある種の風格すら感じられる点もこの作品の特質としていいだろう。しっかり見ごたえのある作品に仕上がっているのだ。
 ただし、個人的には吸血鬼の造形に違和感を持ってしまった。だって、あれってドラキュラ伯爵なんでしょ? あれじゃあ、知性のある存在に見えないじゃん。原作を読んでいないから、まったく的外れな感想を持ってしまっているのかも知れないけれど、もう少し神秘的なイメージの造形にできなかったものかなあ。
 いずれにしても、『吸血鬼ドラキュラ』は読まなければいけないな。