★バニー・レークは行方不明

 『バニー・レークは行方不明』を観る。


 保育園から4歳の女の子が姿を消す。少女はその日、初めてその保育園に連れてこられたのだけれど、不幸な偶然が重なり、保育園では誰ひとりとしてその少女を見た者はいなかった。それどころか、少女と母親はアメリカからイギリスに来たばかりで、保育園以外でもその少女を見たことがある者はひとりもいなかったのである。さらには、家にあったはずの少女の荷物はすべて何者かに持ち去られていて、その少女が存在していたという証拠すらもなかった。母親とその兄だけは、少女は間違いなく存在していたと主張するのだが、捜査にあたった警察の中でも少女の存在を疑問視するような発言が出てきてしまう。

 1965年のイギリス映画。監督ははオットー・プレミンジャー、出演はキャロル・リンレー、ローレンス・オリヴィエなど。
 これは、なんとも怖い映画だった。幼い娘が行方不明になって、その存在を証明するものがひとつもないという状況に直面した母親の焦燥感が、ひしひしとこちらに伝わってくる。1965年のモノクロ映画で、この演出力はすごい。
 とはいえ、謎が解けたあとの展開は、いまの観客からするといささかリアリティに欠け、ギャグとしか思えなかったりするかもしれない。