★シャドウ・イン・クラウド

 『シャドウ・イン・クラウドを観る。

 第二次世界大戦中の1943年。秘密任務を帯びた空軍の女性大尉モード・ギャレットが、離陸寸前のB-17爆撃機に乗り込んでくる。突然、なんの事前連絡もないままに乗り込んできた女性士官にとまどう乗組員は、彼女を機体下部の銃座に押し込める。だが、そのB-17には空の魔物グレムリンがとりついていた。グレムリンを目撃したギャレットの報告を誰も信じようとはしなかったが、ついにはグレムリンのために機器を破壊され、航行に困難が発生する。さらには日本軍のゼロ戦までもが襲いかかり、B-17は絶体絶命の危機に陥るのだが。

 グレムリンというと、どうしてもスピルバーグの『グレムリン』に出てくる奇妙な生き物を想起してしまうかもしれないが、本作に出てくるのは本来の意味での空の魔物のグレムリンだ。『トワイライトゾーン/超次元の体験』でジョージ・ミラーが監督した「2万フィートの戦慄」に出てくるあの化け物なのである。
 前半は、機体下部の銃座に閉じ込められたギャレットの描写だけで進行し、機内の様子はスピーカーを通した音声でしか描かれない。この設定がうまい。狭い銃座から身動きもできない閉塞感と孤独感、そこに襲いかかるグレムリンによる恐怖、それを信じてもらえない焦燥感など、観ていてヒリヒリしてくる。
 そして、そのあとに続く徹頭徹尾予想の上を行くムチャな展開に思わず快哉を叫んでしまう。予告編にあった飛行機から落ちていくギャレットがどうなるかという展開の強引さは、ややもすればムチャすぎて作品についていけなくなる危険性すらある場面なのだけれど、それを許してしまえるパワーがこの映画にはあった。他にも、あの場面、この場面、いくらなんでもムチャでしょうという場面が続くのだけれど、力づくで観客を納得させて、手に汗握らせてしまう説得力があるのだ。そして、ラストの予想のはるか上を行くバトルに、思わず喜んでしまう。いやあ、この展開は誰にも予想できないよな。
 主演は『キック・アス』、リメイク版『キャリー』のクロエ・グレース・モレッツ
 監督は中国系ニュージーランド人の新鋭女性監督ロザンヌ・リャン。誠にもってお見事な演出力だ。