★FALL/フォール

 アメリカ映画『FALL/フォール』を観る。
 フリークライマーのベッキーは、親友のハンターに誘われて、人里離れた荒れ地に建つ600メートルの高さをもつテレビ塔のクライムに挑戦する。だが、老朽化したテレビ塔の梯子が崩落し、2人はその頂上から降りられなくなってしまう。地上では使えたスマホも、テレビ塔の頂上では圏外となっていた。
 はっきり断言してしまう。これは高所恐怖症の人間が観てはいけない映画だ。観ている間、ずっとそわそわと落ち着かず、身体の奥深くが恐怖に震え上がるような状態が続いてしまった。映画館のスクリーンで観なかった幸運をしみじみとかみしめてしまったくらいだ。本当にこの映画は怖い。悶絶しようになるくらいに怖い。生理的な恐怖がずっと持続してしまうのだ。
 ごく限られた場所を舞台とし、登場人物もほとんど2人だけという低予算映画と思われるのだけれど、それでいてこれだけ見せるのは脚本と演出の勝利と言うしかない。『ヒッチャー』に出会った時に感じたのと似たような興奮を覚えてしまった。