★小沼勝『わが人生 わが日活ロマンポルノ』国書刊行会

 小沼勝『わが人生 わが日活ロマンポルノ』国書刊行会を読了。
 先日読んだ『スクリプターはストリッパーではありません』の流れで手を出した一冊。そもそもは、国書刊行会の50周年記念冊子で面白そうと思って買った本なのだが。
 実は、自分は小沼勝監督の映画を1本も観たことがない。日活ロマンポルノも、何本か観たことがあるという程度にすぎない。それでいて、この本はめちゃくちゃ面白かった。映画製作の裏話とか、そこに群れる人々のドラマとか、実に興味深い。
 映画に耽溺していた若者が、やがて日活に入社して助監督としてあたふたとした日々を送り、日活がロマンポルノの製作に方針を変更したおかげで映画監督となり、次から次へと映画を作り、次から次へとさまざまな人々と出会う過程がぎっしりと描かれている。自分とはまったく接点のない世界に生きる人たちの人生だが、それだけに実に面白い。
 小沼勝監督というと、門外漢の自分にはSM映画の監督というイメージで、実際に谷ナオミを主役にしたSM映画などをたくさん撮っているのだけれど、SMはまったく理解できないと告白しているのも面白かった。そういうものなのか。
 予想していたよりもずっと文章が達者で、映画製作の現場にいて汗をかいた人々の息吹が伝わってくるような、そんな1冊に仕上がっている。