★ゾラン・ジヴコヴィチ『図書館』盛林堂ミステリアス文庫

 ゾラン・ジヴコヴィチ『図書館』盛林堂ミステリアス文庫を読了。


 本を題材にしたちょっと奇妙な小説を揃えた短編集。
 小説家が出会った自分の未刊の作品が揃ったネット上の「仮想の図書館」、郵便箱の中にいつの間にか入っている本のせいで生活空間が埋め尽くされていく「自宅の図書館」、あらゆる人間の人生が描かれた本だけが並んでいる「夜の図書館」、地獄に落ちた男に与えられる意外な懲罰を描く「地獄の図書館」、表紙を開くたびに異なる小説が現れる謎の本を描く「最小の図書館」、整然と装丁の優れた名作だけが並ぶ自分の書棚に紛れ込んでくるペーパーバックとの戦いを描いた「高貴な図書館」といった、本好きならば読まずにはいられない作品が並んでいる。
 「自宅の図書館」にある以下の文章を読んで、「ほんと、そうなんだよなあ」とうなずかずにはいられない本好きも多いことだろう。
「それに、よく知られている通り、本は場所を取るものだ。この法則には逆らえない。本の置き場所は、いくらあっても足りないのだ。」
 この文章はさらに続くのだけれど、気になる方は自分の目で確かめてほしい。
 初めてお目に掛かる著者であるのだけれど、今後も「ゾラン・ジヴコヴィチ・ファンタスチカ」という叢書名で、続々と訳される予定になっているとのこと。これは、楽しみだ。