★グエムル 漢江の怪物

 韓国映画グエムル 漢江の怪物』を観る。


 在韓米軍が大量に漢江に廃棄したホルムアルデヒドによって誕生した怪物〈グエムル〉によって娘を攫われた家族が、娘を取り戻すために怪物に挑むという怪獣映画。監督は『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ、娘を怪物に攫われたグータラな父親を演じているのがソン・ガンホという、なかなかの顔ぶれである。が、実は『パラサイト 半地下の家族』をあまり評価していない自分にとって、本作もなんとも的外れな作品としか思えなかった。

 怪物の造形はいい。実に素晴らしい。だが、主人公たちの行動がバカすぎて緊張感がまったく高まらない。主人公がバカなせいで娘は怪物にさらわれるし、父親は怪物に殺されるのだけれど、それがぜんぜん悲壮感につながらない。しかも、主人公だけではなく、怪物退治に乗り出す政府組織からなにからなにまで、みんなバカばっかり。これ、真っ当な脚本で作っていたら、かなり面白い映画になっただろう素材なのになあ。
 クライマックスでは、政府の巻いた毒煙の中で怪物はのたうちまわるのに、人間が平気でいるってのもおかしいし、全身にガソリンを振りかけられた怪物に火炎瓶を投げつけようという場面で投げ損ねるとか、緊張感をそぐことおびただしい。
 しかも、娘をめぐるあの結末のつけかたも納得いかないし。
 なんだろう。いくらでも面白くなる素材なのに、わざとセンスの悪い方、悪い方へと定石をはずしてしまったとしか思えない映画だった。監督には、面白い怪獣映画を撮る気など、さらさらなかったのかもしれないし、その点であれこれ評価している文章も目にしているのだけれど、シンプルな怪獣映画を期待していた当方としては、実にもってガッカリだった。