【読書】真崎守『私の手塚治虫1』真崎守プロジェクト

 真崎守『私の手塚治虫1』真崎守プロジェクトを読了。
 先日読んだ『すくりぶるの季節』の続篇。虫プロダクションの採用合格通知をもらうまでが『すくりぶるの季節』で、この『私の手塚治虫1』では虫プロ入社直後のあれこれをかなり赤裸々に描いている。
 いままでに虫プロ関係では山本暎一による『虫プロ興亡記』を読んでいて、内容はすでにまったく覚えていないのだけれど、ここまで赤裸々には描いていなかっただろう。
 会社としての体裁をなしていない虫プロが、「鉄腕アトム」のテレビアニメだけでてんてこ舞いしている最中に、「ナンバー7」「虫プロランド」の企画が動き出す。ところが、肝心の手塚治虫が忙しすぎて、アニメに時間を割くことができない。でも、自分がやらないと気が済まない手塚治虫のせいで、現場が勝手に作業を進めることは許されない。手塚治虫による絵コンテがあがってこないことには、何も始めることができないのだ。「ナンバー7」「虫プロランド」のためにスタッフは揃えたが、そのまま何もできずに1年間も放置されたりしてしまうのである。そうやって、現場の人間はどんどん疲弊していく。真崎守は、そういう状況をめちゃくちゃ臨場感たっぷりに描いている。
 真崎守が制作進行という、すべての部署にかかわる仕事をしていたことで、当時の虫プロの状況を俯瞰的に見渡していたこともあって、本書の内容がとりわけ充実したものになっているのだろう。
 それにしても、「鉄腕アトム」のアニメ1話を作成するためにかかる費用は200万から250万ぐらいで、それをテレビ局に70万で売っていたというのだからめちゃくちゃだ。その差額を手塚治虫の描いたマンガの原稿料で埋めていたのである。
 手塚治虫に関するとんでもないエピソードが次々に出てくる。例えば、虫プロに組合を作りたいと言い出したのが社長である手塚治虫なのである。仕方なく組合を作ると、就業規則だの業務規程だのを作らなければならず、それを作ると手塚治虫が自分も組合と一緒になって役員会と交渉しますとか言い出すのだ。
 手塚治虫によって、みんなが振り回されていく。その現場はまさに修羅場といっていいだろう。とうとう真崎守も我慢できずに、手塚治虫にむかって怒りを爆発させようというのが本書のクライマックス。いやはや、すごいドラマだ。
 ちなみに1990年にJICC出版局から刊行された真崎守「わたしの手塚治虫体験(一)」という本があるのだけれど、これを読んだのはもう30年以上前のことなので、どういう内容の本であったのかまったく覚えていない。本書とはどういう関係になっているのだろうか? また、本書は『私の手塚治虫1』とあるのできっと『私の手塚治虫2』も出るに違いないと思っているのだけれど、ネットで現在連載されているのは「わたしの手塚治虫体験(二)」となっていて「わたしの手塚治虫体験(一)」の続篇であるらしい。なんともややこしい。いずれにしても、ぜひとも続きが読みなくなる刺激的な本だ。