【映画】ワンセカンドチャンピオン

 香港映画『ワンセカンドチャンピオン』を観る。
 1秒先の未来を予知する能力を持つヤン(エンディ・ザーウグヲクイン)。なんの役にも立たなかった能力だったが、あるときボクシングと出会い、ボクシングでなら1秒先の未来を予知する能力が役に立つということに気がつく。かくして、落ち目のボクシングジムを経営しているシュン(チウ・シンハン)と組んで試合に出て、連勝街道を突っ走ることとなる。
 予知能力を持つ者が試合に出ることは公平さに欠けると、ヤンはライセンスをはく奪されそうになる。しかし、強すぎて満足のいく試合をする相手の見つからないチャンピオンのジョー(チャーノン・サンティナトーンクン)が、ヤンをエキシビジョンマッチの相手に指名する。ところが……。
 途中までは、きわめて特殊な超能力を題材にした作品なのだけれど、終盤に近づいたところで唐突に真っ当なスポーツものになってしまう。なんと、交通事故でヤンは予知能力を失い、それでもジョーに挑戦するために猛特訓を開始するのだ。いやいや、ボクシングはそんな甘いもんじゃないぞ。超能力で勝ち上がってきた人間が、直前になってどんな特訓をしたところで、トップクラスのプロとまともな試合をできるわけがないじゃないか。
 が、試合の映像が迫力満点で、そんなことはどうでもよくなってしまう。このあたりは、ほとんど『ロッキー』と一緒の展開となるのだけれど、試合のシーンさえ充実していれば、あとはすべて許したくなってしまうというのが、ボクシング映画のずるいところなんだよなあ。本当は、もっといろいろなドラマがあって、それがすべて試合に収束するという脚本が理想ではあるのだけれど、そうでなくても楽しめてしまう。
 監督は、ヤンをボクシングの世界に引きずり込むジムの経営者のシュンを演じているチウ・シンハン。この作品を観る限りでは、本当にボクシングが好きな人なんだろうな。
 そして、そのシュンの妹を演じているリン・ミンチェンがやたらと可愛い。『霊幻道士 こちらキョンシー退治局』『6人の食卓』『ザ・フェイタル・レイド 特殊機動部隊』に出ているらしい。