【映画】プロジェクトX-トラクション

 ジャッキー・チェン主演のプロジェクトX-トラクション』を観る。
 謎の武装集団に襲われた中東の砂漠のまっただ中にある中国系企業が運営する石油精製所。民間軍事会社のルオ(ジャッキー・チェン)は、部下を率いて精製所の職員を脱出させようとする。だが、その移動中に武装集団に襲われ、職員を誘拐されてしまう。
 一方、騙されて武装集団の仲間に入っていた元特殊部隊のアメリカ人クリス(ジョン・シナ)は、武装集団のリーダーによって弟を殺害されてしまう。
 誘拐された職員を取り戻そうとするルオと、復讐にのりだしたクリス。ひょんなことから出会ったふたりは、最初のうちは反目し合うのだが、いつしか互いを認めるバディとして武装集団に立ち向かっていくのだった。
 ジャッキー・チェン主演作なのに、そんな作品、知らないぞと思ったら、諸般の事情により日本では劇場公開されず、直接Netflixでの配信になったのだとか。中国とアメリカの合作映画とのことで、ジェイソン・ステイサム主演の『MEG ザ・モンスター』のような“中国語多めのアメリカ映画”みたいな作品になっている。もっとも、こちらはジャッキー・チェンが主演なので、こちらの方がはるかに中国濃度が濃いのだけれど。
 『ラッシュアワー』『シャンハイ・ヌーン』などと同様、ジャッキー・チェンがハリウッドの俳優とバディを組むというアクション映画で、ちょこちょことコメディ要素が入ってくるといういつものパターン。映画の出だしでのジャッキーはシリアスモードで、コメディ要素が入る雰囲気なんてまったくなかったのに、なぜか途中からコミカルアクション映画と変貌してしまっていて、そこにはいささか困惑させられた。
 ジャッキーには娘がいて、その娘から恨まれているという設定は、ついこないだ観た『ポリス・ストーリー/レジェンド』と一緒。そして、バスを連ねて砂漠を疾走するジャッキーたち一行が砂嵐に突入し、そこにバギーカーに乗った武装集団が続々と襲いかかるというシーンは『マッドマックス 怒りのデスロード』からのいただきだ。アクションシーンも、かつてのジャッキー映画で観たことがあるようなシーンが多い。
 というわけで、新味はない。新味はないのだけれど、それでもしっかり楽しめる作品に仕上がっている。特に本作でジャッキーの相棒を務めるジョン・シナがよかった。実は、ジョン・シナという俳優をまったく知らなかったので、「なんだ、このシュワルツェネッガーみたいな男は?」とか思ってしまったのだけれど、有名なプロレスラー出身で、けっこう映画にも出ているんですね。出演作リストの中に『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を見つけた瞬間、おおっ、あいつか!とすぐに分かってしまったのだけれど、とにかく、このジョン・シナのキャラとジャッキーとの相性が抜群で、実に楽しく観ることができたのだった。
 それにしても、あの砂嵐を人工的に作り出す仕組みはかなり無理があるし、それで砂漠を疾走するというのも……いや、許そう。バカバカしい設定だけれど、そのくらいの無理は許容範囲ということにしておこう。