【読書】ジャック・ケッチャム『地下室の箱』扶桑社ミステリー

 ジャック・ケッチャム地下室の箱扶桑社ミステリーを読了。
 妊娠している女性が、堕胎のために病院に行く途中で誘拐され、そのまま監禁されてしまう。そこで自由を奪われ、狭い箱に押し込められたり、木の枠に吊されて鞭で打たれたりという、果てしのない暴行にさらされる。
 文庫にして205ページという短い小説で、内容はきわめてシンプルだ。だが、その短い小説のなんと濃厚なことか。描かれている内容は、きわめて鬼畜な所行である。ヒロインの精神を崩壊に至らしめようという行為が執拗に繰り返される。しかし、ヒロインは心を折ろうとはしない。もちろん、折れそうになるし、泣きわめきもする。言われるがままに屈辱的な行為もする。だが、あの恐るべき『隣の家の少女』のヒロイン同様、強い女性なのだ。それがなかったら、おそらくは陰々滅々たる読み続けるのが辛くなるだけの小説となっていただろう。
 それにしても、ジャック・ケッチャムの小説を読むのは実に怖い。小説の内容が怖いというよりも、この小説を楽しんでしまう自分が怖くなってしまうのだ。これを楽しめる自分というのは、けっこう変態なのではという危惧に襲われてしまうのだ。それでも読みはじめたらやめられないのがジャック・ケッチャムという作家の小説であるらしい。
 これでジャック・ケッチャムの小説は『隣の家の少女』『老人と犬』『地下室の箱』と3作読んだが、まだまだ未読の作品が待ち構えている。おそるおそるではあるのだけれど、他の作品も読み続けることとしよう。