【読書】今野敏『任侠学園』中公文庫

 今野敏『任侠学園』中公文庫を読了。
 潰れそうな出版社を立て直した阿岐本組の組長阿岐本雄造がこんど手を出したのは、荒れ果てた高校だった。窓硝子は割られ、正門にはスプレーで落書きがされ、校庭の手入れさえされていない学校の経営を組長が引き受けてしまったために、またしても代貸の日村は胃が痛くなるような日々を送るはめになってしまう。校長も教頭もやる気なし、生徒は理解不能、生徒の親はクレーマー。しかも、問題のある生徒の背後には別の暴力団の姿までがちらつく。ヤクザですらあきれる荒廃した学園を、はたしてたて直すことは可能なのだろうか?
 前作の『任侠書房』も抜群の面白さだったけれど、第2弾の本作も負けずに面白い。かつて仲間由紀恵主演で、ヤクザの娘が学校の教師となる「ごくせん」というテレビドラマがあったけれど、基本路線はあれと同じだ。ただし、こっちはよりヤクザの生き方が徹底している。教師ではなく経営者としてヤクザが乗り込んでくるという話なのだから。とはいえ、ここで描かれているヤクザは、かつての任侠映画にあったような現実にはありえない一種のファンタジーと呼んでもいい組織だったりもするのだけれど。
 やがて、彼らを慕う生徒が現れ、教師もやる気を見せるようになるというお約束の展開ではあるのだけれど、お約束が悪いなんてことはぜんぜんない。お約束の展開ならではこそ、最後にはホロリとさせられてしまうのだから。
 これをテレビドラマにしたら面白いだろうなあと思ったら、映画になっているのか。それは観てみないと。原作同様に面白いといいなあ。
 しかし、今野敏、なんであれだけ量産していて、こんなに面白いんだ。