★大沢在昌『黒石 新宿鮫XII』光文社

 大沢在昌『黒石 新宿鮫XII』光文社を読了。

 なんと、前作『暗約領域 新宿鮫XI』を引き継いだ物語となっていた。日本に帰国した中国残留孤児の二世、三世によって構成されるネットワーク「金石(ジンシ)」。その組織の幹部集団「八石」のひとりが、警視庁公安に保護を求めてきた。「八石」の中で内部抗争があり、“徐福”と呼ばれる謎のリーダーに反対する者が、“黒石(ヘイシ)”と呼ばれる殺人者によって粛正されているのだと。
 新宿署生活安全課の刑事・鮫島は、前作で彼を裏切った公安の矢崎と再びバディを組んで、謎の殺人者の正体に迫っていくのだった。
  なんだろう。読んでいて、ワクワクドキドキしてこない。実は、しばらく前から大沢在昌の作品を読んでいて、そんな感じなのだ。決してつまらないわけではない。適切なたとえではないかもしれないけれど、あれだけ新作を待ち焦がれていたブライアン・デ・パルマなのに、作風が重厚になってからそれほど心ときめかなくなってしまったのと似ている気がする。作品に重厚さがませばますほど、かつてあった勢いが失われてしまったように感じられてしまう。作品にリアリティの感じられない要素があろうとも、『毒猿 新宿鮫II』あたりの方がはるかに魅力的だったと思うのだ。
 まあ、これは、あくまでも自分の好みの問題にすぎないのだけれど。