★侠客列伝

 高倉健主演、マキノ雅弘監督の『侠客列伝』を観る。
 明治四十年、賭博行為禁止条項を含む新刑法が発布された。賭博を禁止されてはしのぎに影響の出るヤクザたちは、日本大同会という愛国団体を結成し、それを隠れ蓑にしてなんとか賭博を続ける道筋をつけようと画策する。その結成式の世話人に指名されたのは小田原酒勾一家の半次郎だったが、小田原の縄張りを狙う三島の山形一家の策略によって半次郎は殺され、それどころか酒勾一家は一年間の謹慎を日本大同会によって言い渡されてしまう。その後も山形一家による嫌がらせが続くが、遺された酒勾一家の伊之助(高倉健)たちはじっとこらえ続ける。しかし、山形一家の悪逆非道な行いが繰り返され、とうとう我慢しきれなくなった伊之助たちは、山形一家に殴り込むのだった。
 高倉健鶴田浩二藤純子若山富三郎長門裕之藤山寛美といった役者に、マキノ雅弘監督という、こないだ観た『関東緋桜一家』と同じ顔ぶれが揃っているので、どういう作品なのかという知識などまったくないままに借りてきた作品。ストーリー紹介を読んでおわかりのように、完全なパターンにのっとった作品である。同じパターンにのっとった作品でも、『関東緋桜一家』はめちゃくちゃ魅力的な作品だったけれど、こちらはそれほどとは思わなかった。もちろん、悪くはないのだけれど、ものすごく興奮するというほどの魅力は感じなかった。
 特にラストの殴り込みで、敵の親分を追い詰めて追い詰めて最後にバッサリという展開にもっていっていないので、「終」の文字が画面に出た瞬間に「えっ、これで終わりなの?」と肩すかしをくらってしまう。
 とはいえ、役者はいずれも魅力たっぷり。高倉健はもちろんのこと、やっぱり鶴田浩二がいいねえ。鶴田浩二任侠映画をもっと観てみたくなる。
 ただし、藤純子はというと、芸者に身を落としながらも愛した男をずっと待ち続けているというキャラクターなので、いまいち特徴がなくパッとしない。「緋牡丹博徒シリーズ」が始まるのは、本作の直後なので、まだ普通の女優枠だったのだろうか。
 DVDに入っていた予告編を観ると、『日本侠客伝』に始まるシリーズの第9弾とのこと(Wikipediaでは、本作はシリーズには入れられていないのだけれど)。短期間に同工異曲の作品を作り続けていたために、テンションも落ちてきた頃なのかもしれない。