★ザ・ドライバー

 ウォルター・ヒル監督のザ・ドライバー(1978年)』を観る。


 プロの逃がし屋のザ・ドライバーと、その犯罪の現場を押さえるために、銀行強盗を仕込むザ・デテクティヴ(刑事)。そして、犯罪現場の目撃者として巻き込まれるが、それをしたたかに利用するザ・プレイヤー。
 キャストはザ・ドライバーライアン・オニール、ザ・デテクティヴがブルース・ダーン、ザ・プレイヤーがイザベル・アジャーニ。つまり、登場人物にはいっさい名前が与えられていない映画なのである。
 いまとなってはこのキャストにピンと来ない人も多いかもしれないが、当時としては実に贅沢な顔ぶれだったのである。ライアン・オニールはというと、『ある愛の詩』の大ヒット以降、『ペーパー・ムーン』『バリー・リンドン』といった話題作の主演が続いていたし、ブルース・ダーンも『ファミリー・プロット』『ブラック・サンデー』といった大作の後だし、イザベル・アジャーニは『アデルの恋の物語』で世界中から熱狂的に受け入れられあとのアメリカ進出初主演映画だったのである。
 とりわけ、ザ・デテクティヴ役役のブルース・ダーンが実にいい味を出していていい。とはいうものの、クリント・イーストウッドの亜流みたいになっているのがちょっと残念ではあるのだけれど。
 実にストイックな映画で、派手な音楽はいっさいないし、登場人物もずっと無表情で必要最低限のセリフしか口にしない。カーアクションは派手だけれど、それ以外は実に地味な映画で、公開当時のアメリカでの評判もいまいちで興行的にも成功をおさめたとはいえなかったようだ。実際、この翌年に『ウォリアーズ』を撮っていなければ、キャリアがそこで途切れていたかもしれないとウォルター・ヒル自身も語っているようである。
 しかも、オチがわかりにくい。どのようにしてマネーロンダリングを行おうとしていたのかが咄嗟に理解できないと、ラストシーンで「え?」となってしまうのだ。
 とはいえ、ウォルター・ヒル信者である僕はこの映画が大好きだ。めちゃくちゃスタイリッシュでかっこいい映画だと思っている。