【読書】古龍『マーベラス・ツインズ(全3巻)』『マーベラス・ツインズ契(全4巻)』GAMECITY文庫

 古龍マーベラス・ツインズ(全3巻)』『マーベラス・ツインズ契(全4巻)』GAMECITY文庫を読了。
 香港で繰り返し映像化されている武侠小説『絶代双驕』の翻訳である。
 『マーベラス・ツインズ』第1巻と第2巻は、悪人谷から出てきたばかりの14才の少年、小魚児の冒険を描く。正直、行き当たりばったりという印象の展開なのだけれど、先まで読んでいくとこの2巻まではあくまでも導入部にすぎないことがわかる。ここで小魚児は花無缺という同年代の少年と運命的な出会いをするのだが、この花無缺は小魚児を殺すように命じられており、このふたりの絡みが物語の主軸となっていく。一方、あとからあとから奇人怪人ともいうべき武術の達人が登場してきて、物語を彩っていく。小魚児は武術の腕ではかなわないものの、とんでもない悪人ばかりが住んでいる悪人谷で鍛え上げられた機転によって江湖を渡っていくのだ。
 そして第3巻では物語は小魚児の出生までさかのぼり、小魚児とライバルの花無缺のふたりの出生の秘密が語られるところから、物語の全体像がようやく明らかになる。

 『マーベラス・ツインズ』第2巻から3年の歳月が流れ、17才の若者となった小魚児の物語が展開されるのが『マーベラス・ツインズ契』となる。ここからがこの長編小説のメインとなる部分なのだ。
 武術の奥義をめぐる争奪戦、武術界の頂点に立とうとする陰謀術数などが入り乱れ、そこに奇天烈きわまりない武術家たちが跳梁跋扈する。あとからあとから登場する武術家たちのとんでもなさは、山田風太郎の忍法ものに通じる魅力があり、それだけでも実に楽しい。そして、どんな事態に落ち込もうとも楽天的な小魚児のキャラクターが小説の楽しさを倍増させている。
 ところが、この『マーベラス・ツインズ契(全4巻)』を読み終えても物語はぜんぜん終わっていない。なんと、めちゃくちゃ中途半端なところでシリーズの刊行が中断してしまっているのだ。いちおう、さらにもう1巻、『マーベラス・ツインズ絆(1)』が電子書籍として刊行されたらしいのだが、すでに影も形もなく、読むすべはまったくなし。しかも、それで完結しているわけではなく、物語はまだ続いているのである。ネットであれこれ検索してみると、なんと翻訳者の川合章子さんによる翻訳は最後まで仕上がっているらしい。それなのに読むことができないなんて、実に残念なかぎり。