★ブレージング・サドル

 メル・ブルックス『ブレージング・サドル』を観る。

 久しぶりに観たのだけれど、よくまあこんなくだらない映画を撮っていたものだと感心してしまう。そして、その世にもくだらない映画を映画館に観に行っていたむかしの自分を褒めてやりたくなる。
 西部劇である。列車が通ることになっている町ロックリッジ。その町の住民を追い出して大もうけを企む政治家がとった手段は、黒人の保安官を送り込むことだった。かくして、絞首刑直前だったバートが保安官に任命されてロックリッジの赴任することになるのだが……。
 というストーリー紹介はほとんど無意味。意味不明のギャグのオンパレードなのだ。たとえば、モンゴという暴れ者が町に送り込まれて、それを見た町人が「モンゴ、サンタマリア!」と叫ぶのだけれど、「モンゴ・サンタマリア」というキューバ出身のコンガ奏者を知っている人間がどれだけいることやら。悪党の名前がヘドリー・ラマーなのだけれど、みんながみんな名前を「ヘディ」と呼んで、そのたびに「ヘドリー」と言い返すのだけれど、「ヘディ・ラマー」という女優の名前を知らなければ何も面白くないぞ。さらには、マデリーン・カーン演じるドイツ出身の歌姫がマレィーネ・ディートリッヒのパロディだったりするし。
 最高にくだらないのが、豆料理を食いながらカウボーイたちが交互に発するオナラが音楽になるという場面。さすがにテレビ放映時にはオナラの音は消されたとのことだが。
 そして、クライマックスでは西部中からかき集めた悪党どもと町民たちが撮影スタジオを飛び出して暴れ回るという、なんともシュールな展開に。
 くだらなさの極地ともいうべき映画なのだけれど、なんと助演女優賞(マデリーン・カーン)、歌曲賞(作曲:ジョン・モリス、作詞:メル・ブルックス)、編集賞(ダンフォード・グリーン、ジョン・C・ハワード)の3部門でアカデミー賞にノミネートされているのである。大丈夫なのか、アカデミー賞?!