【読書】西条昇『びっくりしたなあ、もう 笑伝・三波伸介』風塵社

 西条昇『びっくりしたなあ、もう 笑伝・三波伸介風塵社を読了。
 「笑点」の司会や、「減点パパ」で知られるてんぷくトリオのリーダー、三波伸介の評伝。自分が子どもの頃にはてんぷくトリオのコントをテレビでやっていて、「名月赤城山」のコントで大笑いをしていたけれど、それでも子供心に「古い」という印象があったような気がする。それ以後は、「笑点」や「減点パパ」などで見ていたけれど、すでにお笑いの人という印象は薄かったのでは。
 ところが、本書を読むと「日本一の喜劇人になる」という思いを強く持っていた人なのだと初めて知った。それゆえ、「減点パパ」で評価されるのはものすごく不本意であったようだ。
 やはり、三波伸介も原点はストリップ劇場にあったという。そして、お笑い仲間とトリオを組んでキャバレーにも立った。その頃に戸塚睦夫伊東四朗と出会い、のちにてんぷくトリオを結成するようになり、そこにトリオ漫才のブームが到来する。昭和40年。ブームの先頭を走るのは、てんぷくトリオとトリオ・ザ・パンチ
 坂本九をメインに起用した「九ちゃん!」というバラエティショーが始まったときに、てんぷくトリオかトリオ・ザ・パンチのどちらかをレギュラーに起用しようという話が起きた。関係者のほとんどが新しさと若さのあるトリオ・ザ・パンチを推したにもかかわらず、井原髙忠がてんぷくトリオに決めてしまったのだという。ここでトリオ・ザ・パンチが起用されていれば、内藤陳さんのその後もまた違うものになっていたのかも、などと思ってしまう。
 本書を読むと、三波伸介という人物は、お笑いに関する大いなる能力を持ちながらも、運に恵まれずにとうとう本当にやりたかったことができなかった芸人であったということらしい。同世代のお笑い芸人には、渥美清や藤山寬美がいて、運に恵まれさえすればこの二人と並び称せられるお笑い芸人として評価されていたはずだという。
 たいそう興味深く、面白い評伝だった。