【読書】日下三蔵『断捨離血風録』本の雑誌社

 日下三蔵『断捨離血風録』本の雑誌社を読了。
 自宅とマンションの2箇所に壮絶な量の蔵書を所有していた著者が、和室を空けるという目的のために、家族や懇意にしている古本屋たちの献身的な協力を得て、延々と時間をかけて本を整理していく過程を紹介した異色のルポルタージュ。なにがすごいといって、本の量と質が異次元すぎるのである。本が多すぎて入ることすらできない部屋、入れるにしてもうずたかく積まれた本と本の間の細いけもの道を細心の注意を払って通らなければならない部屋など想像を絶する状態だったのだ。整理しようにも作業をするスペースがなく、著者はやむなくアパートを借りるのである。
 その山積みになった本に埋もれているのが超絶レアな絶版本ばかり。本人が「こんなの持ってたんだ!」と驚いたりする場面が繰り返されるのに絶句。しかも、超絶レアな絶版本だというのに、同じ本があっちに1冊、こっちに1冊、またこっちに1冊とダブって出てくるのである。そりゃ、本が増えるわけだよね。
 そして、本の山をこっちに移し、あっちに移し、出てきた不要本を処分し、なんとか産みだした空間に無数のカラーボックスを積み上げて、本を並べていく。その過程で発見される貴重すぎる絶版本の数々。絶版本どころか、本の山の下からは、ブラウン管テレビや寝る目的で使うことのなかったベッドなどが掘り出されるのだ。
 本を整理する過程では、本の山に登ったり、崩れてきた本の山に埋もれたりという、信じがたい光景が展開される。
 最終的に3年間かけて2万5千冊の蔵書を減らしたとのことだが、それでもまだ10万5千冊ほどの蔵書が残っているというのだから凄い。組み立てたカラーボックスの数がおよそ300! 凄い! 凄すぎる!
 自分も世間一般の人から見ればとんでもない量の本を持っている方ではあるのだけれど、著者の蔵書はあまりにも異次元すぎて、呆然としながら本を整理する過程を眺めていたという感じの読書時間だった。そして、唖然としながら活字を追っていたら、とつぜん自分の名前が出てきてひっくり返る。巻末に登場する人名の索引がついているのだけれど、そこにも名前が載っているではありませんか。いやあ、びっくりした。
 残念なのは、写真がたくさん掲載されているのだけれど、その写真が小さすぎて何が写っているのかはっきりしないということ。理想としては写っている本の書名が読めればと思うのだけれど、それは無理にしても、もう少し大きめに掲載してほしかった。