【読書】月村了衛『非弁護人』徳間書店

 月村了衛『非弁護人』徳間書店を読了。
 検事として巨悪に挑むが、上層部の罠になかって懲役刑に処せられ、検事の資格を失い、いまは裏社会で生きるヤクザのために法律の知識を提供する「非弁護人」として生きる宗光。あるとき、たまたま出会ったパキスタン人の少年から行方不明となった韓国人の少女を探してほしいと頼まれる。少年が握りしめた小遣いの3,300円でその依頼を受けた宗光が出会ったのは、想像を絶する非道な犯罪だった。行方不明になったとしても誰も気にしないような社会的弱者を食い物にし、海外に売り飛ばしたり、うまいビジネスを餌に金をかき集めさせておいて大量に殺害するというような犯罪が行われていたのだ。その被害者の中には最底辺の存在であるヤクザの下っ端も数多く含まれていた。日頃からヤクザと繋がりのあった宗光は、ヤクザの情報力を頼りに、犯人捜査に乗り出すのだが……。
 うーん、凄い。圧倒された。犯罪の非道さのスケールが半端なく、しかも主人公が頼れる相手がヤクザと、過去に因縁のある弁護士ひとりだけという設定。そして、ヤクザとてタダで主人公に協力するわけではなく、そこで展開される緊張感の半端ないヒリヒリするようなやりとり。さらには、事件を矮小化して処理しようとする国家権力を相手にした裁判までが繰り広げられる。
 月村了衛、本当に凄い作家だ。