【読書】天沢夏月『そして、君のいない九月がくる』メディアワークス文庫

 天沢夏月『そして、君のいない九月がくる』メディアワークス文庫を読了。
 仲の良かった高校生の5人組、ケイタ、ミホ、タイキ、シュン、リノ。そのうちのケイタが家から離れた山で遺体となってみつかる。事故死ということだったが、なぜケイタがその山に行ったのかは、誰にもわからなかった。
 ショックで呆然とするミホたちの前に、ケイタとうり二つの少年が現れる。ケイタのドッペルゲンガーのケイと名乗る少年は、ミホたちに「ケイタの最後の希望をかなえるために、ケイタが死んだ場所まで来てほしい」と頼み込む。ミホたちは、ケイの存在に戸惑いながらも、ケイタが亡くなった山にむかうのだった。
 スティーヴン・キングの『スタンド・バイ・ミー』の天沢夏月バージョンともいうべき作品なのだけれど、青春の痛みがしっかり詰め込まれていて、読んでいてなんとも切ない。そして、衝撃的な真相が待ち構えているのだけれど、思わず「えっ、これってケイタの事故死から何日たっているんだ?」って思ってしまった。
 天沢夏月は、テニスを題材にした『DOUBLES!!-ダブルス-』ではまり、最近は『ヨンケイ!!』『青の刀匠』とジュニア文庫以外のレーベルにも進出して期待しているのだけれど、ふと気がつけば『ヨンケイ!!』は2021年、『青の刀匠』は2022年の作品で、それ以降の新作が出ていない! せっかく目黒考二さんが認めてくれたのだから、「これも目黒さんに読ませたかった!」と思えるような新作を読ませてほしい。