中国映画『ボーン・トゥ・フライ』を観る。
中国に対して、頻繁に敵国の最新鋭のステルス戦闘機による領空侵犯がおこなわれていた。それを迎え撃つ中国空軍であったが、中国の戦闘機に搭載されているエンジンは、欧米が開発したものにくらべてレベルが劣っていた。そこで中国として最新鋭のステルス戦闘機に搭載するためのエンジンの開発が進められていたのだが、そのためには危険なテスト飛行を何度も繰り返さなければならなかった。危険を承知でテスト飛行に挑むパイロットたち。幾多の困難、犠牲を乗り越えて、とうとう独自のステルス戦闘機の開発に成功し、領空侵犯してきた敵国の戦闘機を追い払うことに成功する中国。すごいぜ、中国!
とまあ、そういう内容の映画である。正直、周辺の国の領域をおびやかしたり、公海を勝手に自分の領域と主張しているのは中国だろう!という思いがずっとつきまとってしまい、そうした思いを抜きにしてこの映画を楽しむことはできなかった。最近の中国のこの手の映画は、中国礼賛色が強すぎて、どうにもそれが鼻についてしまう。
しかし、悔しいかな、それでいて映画としての完成度は実に高い。感情を揺さぶる悲劇。それを乗り越えて苦難のはてに成功を手にする瞬間の高揚感。実にみごとなのだ。戦闘機同士のドッグファイトのシーンも迫力満点だ。ライバルとの衝突、それを乗り越えて生み出される友情。パイロットという危険な職業に反対する家族との葛藤。おいしい要素がたっぷりと盛り込まれている。これで国策映画としてのカラーがなければ、手放しで楽しめる映画なのに。中国人なら涙を流して感動できるかもしれないが、中国の脅威にさらされている周辺国の国民としては、残念ながら単純に楽しむことはできない。なんとも実にもったいない。
主人公レイ・ユーを演じているのは『陳情令』でブレイクした王一博(ワン・イーボー)。若きテストパイロットたちの上官を人情味たっぷりに演じているのが『インファナル・アフェアII 無間序曲』『レッドクリフ PartII 未来への最終決戦』などの胡軍(フー・ジュン)。