スティーヴン・ローズ『ゴースト・トレイン(上下)』創元ノヴェルズを読了。
ロンドンとニューカースルをつなぐキングズ・クロス線。なぜかその列車に乗った乗客が、なにかに取り憑かれたかのような衝動的な行動に出て、血まみれの殺人を犯すという事件が連続していた。もっとも、列車と殺人事件とを結びつけて考える者は誰もいなかったのだけれど。
キングズ・クロス線を走る列車から落ちて大けがを負ったマークは、九死に一生を得るものの、事故に関する記憶をすっかり失っていた。だが、それ以来、謎の悪夢に苦しめられるようになり、なぜかキングズ・クロス線に引き寄せられるのだった。
連続して発生する殺人事件の原因は何なのか? マークがキングズ・クロス線に引き寄せられるのはなぜなのか? やがて、キングズ・クロス線に乗り込んだマークを巻き込んで、とんでもない超常現象が発生するのだった!
なかなかとんでもない、スケールのでかいホラー小説である。クライマックスでの情け容赦のない死者の大量生産は、なかなかに圧倒的だ。だけど、なんだろう、設定にいまいち説得力が感じられない。ものすごい力を持った相手なのに、いまいち主人公に対してその圧倒的な力を振るっているとは思えないのだ。
あと、描写がけっこううっとうしくて、読み終えるのに延々と時間がかかってしまった。下巻に入って、物語がとんでもないスケールにふくれあがってからはけっこうページをめくる手のスピードもあがったのだけれど、そこまでがなんともしんどかった。スティーヴン・キングの冗舌さはまったくページをめくる手をとめないのに、スティーヴン・ローズだとうんざりさせられるだけ。小説家としての格の違いというのは、こういうところに現れるものなのだろう。