エドモンド・ハミルトン『星々の轟き』青心社を読了。
終末を迎えた太陽に別れを告げ、太陽系の9つの惑星が新天地を求めて移動していくという表題作のスケールの大きさにさすがはハミルトンと嬉しくなってしまう。地球をロケットにして移動するという設定は過去いくらでもあるけれど、太陽系の全惑星が衛星も引き連れて1列じなって宇宙空間を移動していくという設定には初めて出会った。さすがに古めかしいSFではあるけれど、読んでいて実に楽しい。
かと思うと、息子が宇宙飛行士として月に向かうことになったSF作家の葛藤を描く「プロ」、人類が宇宙に飛び出した時代、終焉を迎える地球の様子を報道するために訪れた地球で、はるか遠い過去に住民が暮らしていた家屋に遭遇した船長の感傷を描く「レクイエム」といった、レイ・ブラッドベリとか萩尾望都とかの作品にでもありそうな短編があったりもする。
その一方で、極限まで人類を進化させたら最後にはどこにいきつくのかという実験を描いた「進化した男」のような奇想SFもあり、これ1冊でハミルトンのさまざまな面を楽しむことができる。
自分がSFにのめり込んだタイミングというのが、ちょうどハヤカワSF文庫の刊行が始まったときだったので、『スターウルフ』とか『星間パトロール』などを夢中になって読んでいたこともあり、自分の中ではエドモンド・ハミルトンというのは完全に別格扱いのSF作家だった。あれから55年たってしまったのだけれど、それでもまだ楽しめる自分の感性に思わず嬉しくなってしまった。
なお、本書は1982年に刊行された短篇集なのだけれど、多少のプレミア価格を覚悟すればいまでも入手は可能。「日本の古本屋」には1500円であるので、昨今の新刊書籍の値段を考えれば、プレミア価格といったところで、そんなに高くもないのではないだろうか。