【映画】熱烈

 ダンスバトルを題材にした中国映画『熱烈』を観る。
 ダンスバトルの全国大会を目指すチーム「感嘆符!」は、カリスマ的なダンサー、ケビンの突出した実力によって予選を勝ち抜く。だが、オーナーのひとり息子でもあるケビンは練習にも出ようとせず、コーチ(ホワン・ボー)は、やむなく練習のための代役としてかつてチームのオーディションを受けたことのあるチェン・シュオ(ワン・イーボー)に声をかける。しかし、全国優勝を確実なものとするため、それまでのメンバーを排除して外国から優秀なダンサーを呼び寄せるケビンとコーチが対立したために、ケビンはチームを抜け、代役だったはずのチェン・シュオにチャンスがめぐってくる。
 出資者を失うなど、チームにはさまざまな試練が待ち受けているのだが、はたして「感嘆符!」は全国大会に出場し、勝利することができるのだろうか……。
 パリオリンピックの公式種目となったブレイキンだが、そのバトルを描いた映画にはインド映画の『ストリートダンサー』があり、内容的にはほとんど一緒といっていいだろう。しかし、そのダンスシーンを観る高揚感は、本作の方がはるかに上をいっている。『ストリートダンサー』はインド映画特有の過剰な演出によって、リアリティを失い、ダンサーの肉体の躍動感がストレートに伝わってこないというきらいがあった。だが、本作ではそのダンスシーンが迫力たっぷりに展開され、「どうやってこんな凄いダンスシーンが撮れるんだ? 本当に踊ってるの?」と、素直に驚かされる。
 しかも、チームメンバーとの友情、コーチの葛藤、料理店を営む母親をめぐるエピソード、ダンスにのめり込みながらも働き続けるチェン・シュオの日常などが過不足なくしっかりと描かれ、そうした場面に登場するチェン・シュオをめぐる様々な人々が全国大会決勝戦の背景として描かれることで、めちゃくちゃ盛り上げてくれるのだ。もうね、決勝戦からエンディングにかけての胸が熱くなる展開はやばいからね。思わず目頭が熱くなってしまうからね。
 最後に明かされる必殺技の正体だけはいささか「ガッカリ」ではあるのだけれど、それ以外は充分に満足できる熱血ダンスバトル映画だった。
 主役を演じるワン・イーボー(王一博)は、もともとヒップホップダンサーとして注目されてアイドルグループ「UNIQ」のメインダンサーを担当していたとのことなので、まさに本作にはうってつけの人材なのだろう。その後、古装片「陳情令」でブレイクし、2023年には『無名』『ボーン・トゥ・フライ』『熱烈』の3本の主演映画が日本でも公開されている。端正な顔立ちで、なるほど人気が出るわけと納得がいく。