【映画】ダークグラス

サスペリア』『フェノミナ』で知られるダリオ・アルジェント監督の2022年作品『ダークグラス』を観る。
 コールガールをターゲットとする連続殺人事件が発生する。コールガールを生業とするディアナもその謎の犯人に狙われ、男の運転する白いバンに追い回されて交通事故を起こしてしまう。さいわい命は無事だったが、ディアナはその事故で失明してしまう。ディアナは、事故に巻き込まれて孤児となった中国人の少年チンと暮らすことになるのだが、白いバンの男は執拗にディアナを追い回すのだった。
 というだけのストーリーで、なんのひねりもないし、凝った展開も驚きのどんでん返しもない。せめて犯人の正体になんらかの驚きがあるかと期待したが、それもなし。ただただ盲目のコールガールが逃げ回るというだけの映画なのである。途中、浅い川の中を逃げ回るシーンで、ミズ蛇の群れに襲われるあたりにアルジェントらしさが垣間見られはするものの、だからといってそのシーンが特に効果をあげているというわけではない。
 でもまあ、『サスペリア】にしても『フェノミナ』にしても、たいしたストーリーがあるわけではなく、ただひたすらに美少女がいたぶられて怯えるシーンを楽しむ映画だったので、基本線は昔と変わらない。変わったのは、主人公がジェシカ・ハーパージェニファー・コネリーといった美少女ではなく、もうちょい歳のいったコールガールという点だろう。さすがにダリオ・アルジェント、歳をとって好みが変わったのか。
 『サスペリア』あたりだと、特異な映像と音楽に際だった個性があったのだけれど、残念ながら本作にはそれもなし。
 しかし、それでもアルジェント作品というだけで許したくなってしまうのだから、ファンというのは救いがたい。