小野純一『ミステリ懐旧1/3面鏡』盛林堂ミステリアス文庫を読了。
68ページの薄い冊子なので「読了」と威張るほどのものでもないけれど、薄くても中身はとっても濃い。ディープなミステリを中心に扱っている古書店「盛林堂」の店主・小野純一氏が、「日本古書通信」に北原尚彦氏、小山力也氏とリレー方式で現在も連載中の「ミステリ懐旧3面鏡」のうち、小野氏が担当した14回分の原稿を収録したもの。真っ黒に濃い読者を対象にそのスジの専門家が書いた原稿なのだから、中身が濃くなるのも当たり前というものだろう。
取りあげられている本は、角川文庫の横溝正史、奇書として名高い『醗酵人間』、その『醗酵人間』よりもさらにレアな『骨なし村』、全貌がまったく不明な春陽文庫などなど。入手困難な本を紹介するにあたっては、著者の博識による背景情報などもがっつり盛り込まれているので、短文ながらもたいそう興味深く読まされてしまう。
ここで取りあげられているような本は、基本的に自分にとっても大好物なジャンルなので、なおさら楽しく読めてしまった。ちなみに、本書でとりあげられている本のうち、超絶レアとされる『醗酵人間』とか『骨なし村』をかつては自分も保有していた。しかし、蔵書を減らしている真っ最中でもあり、「処分するときは盛林堂さん」と約束もしていたので、すでに他のたいしたことのない本と一緒に盛林堂さんに送りつけてしまったのでした。まあ、二度と入手することはないんでしょうね。