【読書】山田裕樹『文芸編集者、作家と闘う』光文社

 山田裕樹『文芸編集者、作家と闘う』光文社を読了。
 北方謙三船戸与一逢坂剛などの作家を世に送り出した編集者の、編集者人生を振り返って描いたノンフィクション。作家たちとの具体的なエピソードがぎっしり詰まった実に濃厚な1冊で、めちゃくちゃ面白く読めた。
 圧倒的だったのは、逢坂剛の『百舌の叫ぶ夜』の原稿を受け取ってから発行にいたるまでのエピソード。原稿を読んで実に面白く「これはいける」と思ったが、詳細に読み込んで直すべき欠点を抽出し、逢坂剛に書き直しを依頼するのだが、その修正点というのが実に微妙な部分で、編集者というのはそこまで読み込むのか!とびっくりした。
 実は一時期、ゴールデン街の「深夜プラス1」で著者の山田さんをけっこう頻繁に見かけていた。失礼な話だが、こんなに細かい仕事をされる方という印象ではなかった。いつもにこやかに飲んでいたという印象があり、もっとおおらかな仕事をしているのかと思っていた。ここまでやるからこそ、多くの作家を世に送り出し、編集者として名前が知られるようになったわけだなと大いに納得させられた。