インドネシアのアクション映画『ロスト・イン・シャドー』を観る。原題は「The Shadow Strays」。
暗殺組織“死の影”によって最強の暗殺者として育てられた17才の少女(アウロラ・リベロ)。「13」というコードネームで呼ばれる彼女は、日本ヤクザの本拠地に乗り込んでいって組織を壊滅しようとするが、あやうくしくじりかける。彼女の師であるウンブラ(ハナ・マラサン)は、「13」がまだ未熟であるとして任務から外し、ジャカルタでの待機を命じる。だが、たまたま出会ったモンジという少年が巻き込まれたトラブルに介入したために、巨大な勢力を相手にたったひとりで立ち向かうことになるのだった。
いやあ、すごいものを観てしまった。なんだ、この半端ないバトルの連続は。青木ヶ原の樹海にあるヤクザの本拠地での血まみれかつスピーディかつアクロバティックなバトルに始まり(このパートは日本映画と言われてもまったく違和感がないほどしっかりした日本語で撮られている)、あとはひたすら銃器と刃物と車と肉体による過剰なバトルが物語を牽引していく。しかも、登場する連中がことごとくしぶとい。ナイフで刺され、車にはねられ、釘を埋め込まれた爆弾の直撃をくらって、普通ならとっくに物語から引っ込むようなダメージを食らったキャラクターが、血まみれになって主人公に襲いかかってくるのだ。なんだ、この逞しすぎる生命力は。それでいてその生命力にとどめをさす一発の容赦のなさも半端ない。
しかもそのバトルシーンの演出に、たるみがまったくない。この映画のバトルシーンの演出をした人間は、いったいどういう人物なのだろう? シラットという格闘技がこの演出のベースにあるらしいのだけれど、こうした格闘技にそうとう詳しくないと、このバトルシーンの演出はできないぞ。インドネシアの谷垣健治か! とにかく、あとからあとから繰り出される格闘シーンがどれもこれも迫力満点で、まさかインドネシア映画でこのレベルのバトルシーンを満喫できるとは思ってもみなかった。
そして、その過剰な格闘シーンを違和感なくこなしてしまうアウロラ・リベロという女優はいったい何者なのだ? すごすぎるじゃないか。検索してみると『アリ&クイーンズ』というコメディ映画、『恋は降りしきる雨のよう』という恋愛映画に出ているようなのだけれど、アクション専業の女優さんというわけではないのね。よくこの激しいアクションをこなすことができたな。
さらに付け加えるならば、さすがは東南アジアの映画だけあって、血まみれの描写にも容赦がない。至近距離から顔面に銃弾を何発も何発もぶちこんだり、日本刀で腕を斬ったり首を斬ったり腹を突き刺したり、目玉に指を突っ込んだり、ゴア描写もてんこもりなのだ。これは、受けつけない人もいるだろうな。
監督はティモ・ジャヤントという人で、調べてみると前に観たイコ・ウワイス主演の『ヘッド・ショット』の監督だった。他にも何本かネットで配信されている映画があるみたいなので、これはぜひともチェックしなければ。