松山容子主演のシリーズ最終作『めくらのお市 命貰います』を観る。
漁村福田村では、漁港を改築する工事のために、漁民が立ち退きを迫られていた。漁民を代表する亀長(曽我廼家明蝶)は、せめて一戸あたり十両の立ち退き料を出してほしいと交渉する。しかし、十手御用を預かる灘万(田崎潤)は、悪代官と組んで、お上から預かった立ち退き料を懐に入れ、ただ同然で漁民を追い出そうとしていた。そこへ、悪代官から町娘を救ったことで100両の賞金をかけられたお市(松山容子)が現れる。賞金稼ぎに追われて村に潜んでいたお市だったが、灘万一派の悪逆非道なおこないに我慢できずに漁民を救ったことで正体がばれ、追い回されることになってしまう。それをかくまったのが、亀長と娘のお半(大信田礼子)だった。しかし、灘万一派の無法はとどまることを知らず、直訴を決意した亀長は江戸に向かうのだが、その途中で灘万に捉えられてしまうのだった……。
シリーズ4作目にして最終作となった本作、前3作より大いにスケールアップしていて、オープニングから派手な殺陣が展開される。その後も見ごたえのある殺陣が繰り返され、松山容子の華麗なる仕込み杖さばきをたっぷりと堪能できる。登場する役者も、賞金稼ぎとして目黒祐樹、丹波哲郎が出たりして、なかなか豪華だ。また、賞金稼ぎの腰巾着として登場しながらいつしかお市の手伝いをするようになる高松しげお、ちょい役で登場してどつき漫才を披露するのが正司玲児・敏江などを見られるのも楽しい。
しかし、「これだけ役人を斬ってしまって大丈夫なのか? さらに賞金稼ぎに追われることになるのでは?」などと心配になってしまうのだけれど、そこをちゃんとクリアしてくれる脚本が用意されていて、思わず快哉を叫んでしまう。おおっ、そういう展開でしたか。
それにしても、これだけ魅力的なシリーズでありながら、なんでたったの4作で終わりにしたのかなと思ったら、本作の原作者である漫画家の棚下照生と結婚して、映画界から引退をしてしまったからなのですね。とはいえ、テレビドラマへの出演は続けていて、本作の翌年に全24話で作られたテレビ版「めくらのお市」にも出演しているのだけれど。