中国映画『イップ・マン 九龍』を観る。
九龍城塞を本拠地とする裏社会の支配者ジェン。彼は若い女性を攫ってきては、イギリス人に売り飛ばしていた。あるとき、イップ・マンに挑んであっさり負けた身内に頼み込まれて、ジェンはイップ・マンを罠にかけ、イップ・マンは殺人犯として警察に逮捕されてしまう。金を積まれた警察署長の独断で処刑が決まったイップ・マンは、警察署を抜け出し、九龍城塞に向かうのだが……。
ドニー・イェン主演の『イップ・マン』のヒット以降、何本も作られることになったブルース・リーの師匠にして伝説の武術家イップ・マンを主人公にした武術映画の1本。まあ、どれを観ても本家ドニー・イェン版の足元にも及ばない作品ばかりではあるのだけれど、本作もまあ、同じくといった作品ではある。
ストーリーはきわめてシンプルで、単純にそこそこ楽しめるものの、いろいろと突っ込みどころあり。
オープニングは、九龍城塞に乗り込んでいくイップ・マンとその他大勢の男たちとの雨の中のバトル。これが、ウォン・カーウェイの『グランドマスター』の完璧なパクリ。亜流イップ・マン映画のお約束の場面とはいえ、これはいくらなんでもマネしすぎ。しかも、このイップ・マンのファッションも『グランドマスター』のまんまだったりする。
そこから、時間を遡って、どうして九龍城塞に単身乗り込んでいくことになったのかという物語が始まるのだけれど、その発端というのがしょぼい。イップ・マンの道場が邪魔で道場破りにやってきた武術家が、あっさりイップ・マンに敗退して、身内のジェンに泣きつくというのが発端なのだけれど、この武術家というのがぜんぜん強くない。単なるコメディリリーフ的なキャラに過ぎないのだ。おいおい、そんなのが物語の発端なのかよ。
そして、九龍城塞に入るためには、四天王の持つ札が必要と言って四天王に挑んでいくのだけれど、その4枚の札が必要という情報はどこから得たんだ? そんなエピソードはどこにもなかったぞ。よくわからんが、そういう理由で四天王に闘いを挑んでいくイップ・マン。けっこうあっさりと四天王との闘いを制して4枚の札を手に入れ、颯爽と九龍城塞に乗り込んでいくのだけれど、あれ? ぜんぜん札を使ってないぞ。力づくで九龍城塞に乗り込んでいったので、札は必要なかったじゃん。単に、四天王とのバトルという設定を物語に入れたかっただけかい!
まあ、この四天王とのバトルは、そこそこ楽しめたからいいんだけど。特に酔拳の使い手の男と、包丁を武器にする女性のペアを相手とするバトルは見ごたえがあって楽しめた。
さあ、いよいよクライマックス。四方八方から襲いかかってくるジェンの手下を片端から倒していくイップ・マン。だが、ジェンは余裕たっぷりで「九龍城塞は俺の縄張りだからな」とか言っているけれど、この余裕はどこからきたんだ? 配下にいた凄腕がひとり倒されただけで、こそこそと逃げだそうとする情けなさ。
主演はマイケル・トン(唐文龍)。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 南北英雄』『野獣の瞳』『欲望の街・純愛篇 紅い疾風』などの出演作があり、ネット情報では長年にわたって詠春拳を学んだということなんだけれど、ほとんどカメラワークでごまかしたアクションしか披露していない気がするぞ。
というわけで、あれこれ難癖をつけてしまったのだけれど、けっしてつまらない映画ではありませんでした。そこそこアクションを楽しめる作品であります。まあ、あくまでも「そこそこ」ではあるんですけどね。