【映画】カルマ

 レスリー・チャン主演のホラー映画『カルマ』を観る。
 幽霊を観てしまうということから精神的に追い詰められ、何度もリストカットを繰り返してきた若い女性ヤン(カリーナ・ラム)。親戚の紹介で幽霊の存在を否定し、心霊現象はすべて脳が産みだした幻覚にすぎないと断じる精神科医ジム(レスリー・チャン)の診察を受けるようになり、ジムの親身なカウンセリングによってなんとか快方に向かっていく。いつしか、医師と患者という関係を超えてふたりの間に恋愛感情が芽生え、ともに暮らすようになるのだが、その頃からジムに異常な行動が目立つようになる。実は、過去の悲惨な経験による深刻なトラウマを抱えているのはジムの方だったのだが……。
 カメラワークがなんとも不穏で、なにが映っているわけでもないシーンであっても、いかにも何か出てきそうで怖い。そして、実際に死んだ人間の亡霊が現れるシーンが何度もあるのだけれど、これまたカメラワークがうまいので、なかなかに怖い。しかし、それらのシーンが本当に幽霊が出ているのか、あるいはヤンの幻覚にすぎないのかは明らかにされない。そのあたりも実にうまいし、脚本もよくできている。
 そして、後半になってジムの過去のトラウマによる亡霊が出てくるシーンになっても、それがジムの幻覚にすぎないのか、あるいは本当に亡霊が出てきているのか判然としない展開が続く。とはいえ、本当の亡霊だとしたらあの屋上での亡霊の反応はいまひとつすっきりしないし、幻覚だとしたらあのような展開にはならないような気もする。
 それにしても、2003年に飛び降り自殺を遂げたレスリー・チャンの遺作となった作品であると思って観ると、なんともつらい作品だ。主人公ジムは、過去にとらわれて精神を病み、ついにはビルの屋上から飛び降り自殺を図ろうとするのである。レスリーの自殺は鬱病によるものと推測されているのだけれど、その原因の一端にこの作品があったりしないだろうか、などとつい考えてしまう。本作における過去にとらわれて精神を病んでいく主人公の姿が、あまりにもリアルに見えてしまうのだ。
 監督は『バレット・ヒート』『ダブルタップ』などのロイ・チーリョン。『つきせぬ想い』『夢翔る人/色情男女』などのイー・トンシンが脚本に参加している。