【映画】上海ブルース

 ツイ・ハーク監督の初期作品『上海ブルース(上海之夜)』を観る。最後に観たのはどうやら1991年らしいので、なんと33年振りだ。
 1937年、上海。日本軍の空襲があった夜、橋の下で出会ったシュウ(シルビア・チャン)とドレミ(ケニー・ビー)。暗がりの中で出会ったふたりは、お互いの顔もわからないまま、戦争が終わったらまたここで会おうと約束をする。
 それから10年。上海は終戦直後の混乱の中にあった。物価は高騰し、就職もままならない。そんなある日、キャバレーで働くシュウのもとに、田舎から出てくるなりお金をすられてしまった若い女性(サリー・イップ)が転がり込む。天真爛漫な彼女は、上の階に住む若い音楽家の卵に惚れ込むのだが、その相手こそがシュウと橋の下での再会を約束したドレミだった。
 戦後の混乱の中、逞しく生きる庶民の姿をひたすらにぎやかに楽しく描いたツイ・ハークの傑作。ケニー・ビーもシルビア・チャンも若いのだけれど、なによりかにより、サリー・イップが可愛い。そして、ロレッタ・リーがこれまた可愛い。脇には、龍剛、胡楓、シン・フイオンといったお馴染みの顔を見ることもできる。
 音楽は当時の香港映画には欠かすことのできないジェームズ・ウォン。彼の手がけたテーマ曲が流れるだけで、心が浮き立ってくる。撮影はビル・ウォンとともにデヴィッド・チャン(鐘志文)の名前もある。さらには撮影助理としてアンドリュー・ラウの名前まであるではないか。のちに香港映画を支えることになるスタッフが、若き日にこの映画に参加していたのである。
 この頃の香港映画を見直していると、もうそれだけでしあわせな気分になってしまって、新作なんかなくてもいいという気分になってしまう。自分にとって、あの頃の香港映画というのは、まさにそういう宝物なのだ。