1991年のドニー・イェン主演映画『邪神拳(魔唇劫)』を観る。
いやあ、実に久しぶりにC級香港アクション映画を楽しんでしまった。むかしは、このたぐいの香港映画を山のように観たものだけれど、最近はあまり日本に入ってこないからなあ。
大学教授のシャン(ドニー・イェン)が女子学生に囲まれてバーベキューをしていると、突然月が赤く染まり、唐突に現れた月魔(ロー・ワイコン(慮恵光))が女子学生を血祭りにあげていく。それをとめようとしたシャンも月魔に倒されてしまう。しかも、犯人と目されたシャンは警察に逮捕されるのだった。だが、保釈金を積んで警察を出ると、月魔の正体を探るべく宗教学に詳しい図書館館長(ポーリン・ヤン)を訪ねるのだが、彼女も月魔に襲われて命を落とす。
月魔の背後にマー・ティエンという人物がいることを知ったシャンは、元妻のシャーメン(徐希文)、シャーメンの現在の恋人のチェン警部(ベン・ラム(林國斌))、友人の探偵とともにマー・ティエンの屋敷を襲撃するのだが、シャーメンは捉えられてカンボジアへと連れ去られてしまう。
月魔を倒すため、シャーメンを救い出すため、カンボジアに飛ぶ一行。
一方、カンボジアでは、「黒風族」の王女パイ・ロー(ポーリン・ヤン)が月魔を倒すために、山奥から街に出てきていた。そして、月魔との闘いで傷ついたところをシャンたちに助けられる。かくして、パイ・ローを仲間に加えて、マー・ティエンの本拠地に乗り込んでいくのだが……。
ストーリーを紹介しておいてなんだけど、あまり考えてないだろ!と突っ込みたくなる。カンボジアの月魔がどうして唐突に香港の女子学生を襲うのかがわからん。そして、香港でもカンボジアでも機関銃を乱射しまくるマー・ティエンの配下。それを、奪った機関銃で片端から撃ち倒していくシャンたち。完全な大虐殺レベルで殺しまくっているのだけれど、香港ではそれをとがめられる気配はない。そのくせ、女子学生殺しでは、フー警部(シベール・フー)が執拗にシャンを追い回すんだけどね。
大好きなシベール・フーが出てきてとっても嬉しいのだけれど、たいした根拠もなしにシャンを犯人と決めつけて追い回すだけの登場だ。
それにしても、香港映画、南洋邪教が好きだよなあ。邪教ホラー映画を撮るなら、とりあえずカンボジアあたりを舞台にしておけばいいじゃんというのが、ひとむかし前のパターンなのだ。
監督は王振仰(ジミー・ウォン)。中には王羽(ジミー・ウォング)と勘違いしている人もいるみたいだけれど、別人ですから。
そして謎なのが英語表記のエンドクレジット。オープニングのクレジットは漢字なのに、なぜかエンドクレジットは英語なのだ。しかも、そのトップに名前があるのが「ムーン・リー」! ムーン・リー、出てないぞ。3番目に名前のある「TSUMURS YUKARI」って、誰? もしかしたら、ムーン・リーの出ている別の映画と合体させて1本の映画に仕立て上げたというようなバージョンも存在しているのだろうか? 実際に、むかしはそういう映画もあったのだよ。