会社の帰りに雨に降られてしまい、背負ったバッグの外ポケットに入れておいた読みかけの文庫本をグショグショに濡らしてしまった。濡らしてしまったのは澤村伊智『すみせごの贄』角川ホラー文庫。すっかり水を吸ってしまったので、読み終えたらさっさと捨てるしかないなと思っていたら、冷凍庫に入れて凍らせるという補修方法を教えてくれる人がいて試してみることにした。そのために、さっさと読み終えて冷凍庫に突っ込んできたのだけれど……。
表題作の他に「たなわれしょうき」「戸栗魅姫の仕事」「火曜夕方の客」「くろがねのわざ」「とこよだけ」の6編を収録。
どれもこれも面白かったと書きたいところなのだけれど、どういうわけか表題作の「すみせごの贄」だけいまいちピンとこなかった。異様な設定でもリアルな感じが怖さに繋がるのだと思うのだけれど、この表題作だけは冒頭から現実感がなく、「夢でした」と終われば「ああ、やっぱり」と思ってしまうような雰囲気があった。
逆にとりわけ「これは怖いな」と思ったのが「たなわれしょうき」と「くろがねのわざ」。ヒットした映画の特殊メーキャップを褒めると呪われてしまうので悪口しか言えないという「くろがねのわざ」の奇妙な設定は好きだなあ。
本をパラパラめくりながら感想を書きたかったのだけれど、その肝心な本が冷凍庫に入ってしまっているので、記憶だけを頼りに感想を書くことになってしまった。もう少し具体的に書きたかったのだけれど、やはり本が手元にないと書きにくいな。
さて、ぐしょ濡れになってしまった『すみせごの贄』は、凍らせることで無事に復活するのだろうか?