CIAの暗殺者としての過去を持つ記憶を失った男、ジェイソン・ボーンを主人公とするシリーズの第3弾『ボーン・アルティメイタム』を観る。
彼を生み出した秘密プロジェクト「トレッド・ストーン作戦」の存在に気がついたイギリスの新聞記者が登場してきたことで、ジェイソンは再び血なまぐさい世界へと引き戻されてしまう。しかも、その作戦は新たな「ブラックブライアー作戦」として継続されていたのだった。
面白い! 前作のラストシーンがまったく別な意味を持って再現されるシーンでは、鳥肌がたってしまった。この脚本は実におみごとだ。また、前作で登場していたCIAの女性職員ニッキー・パーソンズ、前作でジェイソンを追い詰めたパメラ・ランディといったキャラクターが、実にいい感じで再登場してくる。これぞシリーズ作品の醍醐味というものだろう。
とりわけ、ラストシーンでのニッキー・パーソンズの表情が実に実にいい! この演出のみごとさよ。観ているこちらまでニヤリとさせられるみごとなシーンだった。
とはいえ、アクションシーンの演出が、激しく揺れ動く画面、細かすぎるカット割りの積み重ねというのは前作同様で、これはなんともいただけない。画像が激しく揺れ動くのはドキュメンタリー映画などから導入された手法で、臨場感を高める効果があるのだろうけれど、ものには限度というものがある。徹頭徹尾これをやられたのでは、ただ単に目が回るだけになってしまう。ここまでやらずとも、充分に迫力のある映像は撮れるだろうに。
そして、ジェイソンの排除を担当するCIAの責任者が、愚かで強引すぎるという設定も相変わらず。CIAやFBIの捜査責任者が強引で愚かという設定は、繰り返し繰り返し観てきているので、もう少し冷静でクレバーな敵役を設定してほしいぞ。まあ、そういう敵役だからこそ、やっつけたときの爽快感があるというものなのだろうけれど。
本作では、とうとうジェイソン・ボーンという暗殺者がいかにして誕生したのかという、その原点まで辿り着き、いちおう物語は完全に完結したように思われる。が、まだ続篇があるので、どういう設定になるのか、実に楽しみだ。