タイのホラー映画『女神の継承』を観る。なんとなく、アジアンホラーを観てみたい気分だったのだ。
タイ東北部の村落で昔から脈々と引き継がれてきた祈祷師の一族。それを取材するテレビクルーは、ニムという女性祈祷師に取材対象を絞り込んでドキュメンタリーの撮影を開始する。だが、ニムの姪であるミンの様子がおかしくなり、もしかしたら祈祷師の代替わりの取材ができるかもしれないと、撮影クルーはミンの撮影も開始する。だが、ミンの様子はどんどんおかしくなり、どうやらミンは悪霊に取り憑かれているらしいことが明らかになっていく。ニムはなんとかその悪霊を祓おうとするのだが……。
映画は、ニムとミンを取材するテレビクルーの撮影した映像で構成される。いわゆるモキュメンタリーの手法を採用した作品なのだ。だが、時として「いやいや、この映像はテレビクルーが撮影したというには無理があるでしょ」という映像が紛れ込み、いささかこの手法にブレがあったりもする。とりわけクライマックスでは「その場で、この映像を冷静に撮っているわけがないでしょ」という場面も多く、モキュメンタリーの手法は完全に失敗に終わっている。
それと、あれこれと納得のいかない展開も見られる。とりわけ、悪霊に取り憑かれたミンが夜ごと家の中を徘徊して悪さをしてまわる展開には「なぜ縛りつけておかない。どうして赤ん坊もいる家の中を自由に動き回らせておく」と、見ていていささか腹立たしくもなってしまう。
そして迎えるなんとも胸くその悪いクライマックス。もう少ししっかりした映画だったら、こういう終わり方であってもそれなりに受け入れるのだけれど、納得のいかない展開からの胸くその悪いクライマックスというのは、なかなかに受け入れがたいものがある。
いささか胃にもたれる映画だったので、しばらくはもっと胃もたれのしない軽い映画を観たいという気分だ。