【映画】わたしの幸せな結婚

 塚原あゆ子監督の『わたしの幸せな結婚』を観る。目黒蓮今田美桜主演のラブストーリーという知識しかなくて観たのだけれど、なんと、明治・大正風の異世界を舞台にした夢枕獏の『陰陽師』とでもいうような物語ではありませんか。
 特殊な能力【異能】を受け継ぐ家系の者たちが、国を治める帝(てい)と共に、帝都を守っていた。だがそこに、何者かが災いをもたらした。異能者による陸軍対異特殊部隊を率いる久堂清霞(目黒蓮)は、災いが拡大する前に、その原因の探求に乗り出していく。
 一方、強力な異能を持つ名家に生まれながらも、異能を持たず小間使いのように扱われていた斎森美世(今田美桜)は、政略結婚として清霞のもとに送り込まれる。幸せを知らずに育った美世は、そこで生まれて初めて人の優しさに触れ、少しでも長く清霞のそばにいたいと望むのだが……。
 正直、ストーリーの細かい部分はよく分からなかった。字幕のつく洋画と違って、日本映画はセリフがよく聞き取れないと理解しそこねたりする。もっとも、セリフが聞き取れたとしても、いまいち分からない設定だったような気もする。だが、分からないながらも、たいそう面白く観てしまった。主人公ふたりのキャラクター設定が絶妙で、それだけで充分に観ていられる映画に仕上がっている。
 『ベイビーわるきゅーれ』の髙石あかりのにくったらしい役もはまっているし、『虎に翼』の久保田先輩を演じている小林涼子も美しい。映画を観ている間は誰だか気がついていなかったのだけれど、美世の母親を演じていたのは土屋太鳳と知ってびっくり。ぜんぜんイメージが違うじゃん。
 というわけで、塚原あゆ子監督、『アンナチュラル』『MIU404』のせいで変な作品を撮る監督とか思っていたら、ぜんぜん真っ当なストレートなエンターテインメントだった。変な作品を撮っていたのは、野木亜紀子の脚本のせいだったのだろうか。