【読書】今野敏『任侠浴場』中公文庫

 今野敏『任侠浴場』中公文庫を読了。
 ヤクザがさまざまな企業を立て直すという〈任侠シリーズ〉の第4弾。出版社、学校、病院と立て直してきて、今度は銭湯である。いままではそれなりに社員のいる企業の立て直しを題材にしてきたが、今回は家族経営の銭湯だ。それでドラマになるのか?と思ったが、さすがは今野敏、しっかりあれこれと工夫を凝らしたドラマとなっている。しかも今回は、阿岐本組が全員揃って道後温泉に銭湯の勉強と福利厚生を兼ねて旅行に行ったりもするのだ。えっ、背中にモンモンを背負って温泉旅行に行ったりして、温泉に入れるの?と思ったら、なんと道後温泉にはタトゥオーケーの温泉がちゃんとあるのだ。
 相変わらず組長の道楽(?)につきあわされて、心配症の代貸・日村が悩まされるというパターンは健在だが、道後温泉では日村が組長から「お前ものんびりしろ」と命令されて、のんびりすることに慣れていない日村が必死にのんびりしようとするなりゆきがおかしい。また、組長のつきあいの広さに驚かされるいつものパターンも健在だ。
 前回、なぜか阿岐本組に出入りするようになってしまった女子高校生の香苗が、今回も登場してきて、いつの間にかレギュラーメンバーとして活躍するようになっているのもおかしい。
 これだけ面白い小説を書く今野敏なので、きっと警察小説も面白いだろうと思うのだけれど、作品が多すぎて手を出しかねている。いったい、どれを読めばいいのやら。