エリー・グリフィス『見知らぬ人』創元推理文庫を読了。
2月にあった東京創元社の「新刊ラインナップ説明会2024」の際に訳者の上條ひろみさんからサインをいただいたので、これは絶対に読まなければいけない本と決めていたのだけれど、実際に読むまでけっこう時間がかかってしまった。そして、読みだしてから読み終わるまでもけっこう時間がかかってしまった。前半が非常にゆっくりしたペースで物語が進んでいくので、一気に読み切るということができなかったからだ。
英語教師のエラが何者かに殺害され、現場には「地獄はからだ」という手書きのメッセージが残されていた。それは、エラの同僚だった英語教師のクレアが研究している小説家ホランドの「見知らぬ人」という短編小説に出てくるフレーズだった。そして、何者かによってクレアの日記に「ハロー、クレア。あなたはわたしを知らない」という書き込みがなされる。それは、殺人現場に残されていたメッセージと同じ筆跡の書き込みだた。やがて第2の殺人が発生し、事件は予想だにしなかった展開を見せる。
物語は、英語教師のクレア、15歳になるクレアの娘のジョージー、殺人事件を捜査するハービンダーの3人の視点からの描写を切り替えながら描かれていく。そこにさらにクレアの日記、ホランドの「見知らぬ人」の引用が挟み込まれていく。それが、じっくりじっくりとしたペースで進むので、途中まではいまいちのめり込むことができなかった。
ところが、中盤から徐々に加速度がついていき、終盤では3人の視点の切り替えもどんどん短くなっていき、驚愕の展開を見せるのだ。そして、すべてが明らかになったとき、「えっ、そういえばそういうさりげない描写があったな」と、思わず前の方にその描写を探してしまう。いやいや、それってさりげなさすぎ! でも、あれこれとしっかりつじつまがあっていき、納得させられてしまう。
そして、物語が完全に終わったところで、ホランドの短編小説「見知らぬ人」が収録されているのである。おおっ、なんという懲りようだろうか。
さて、最後にこの小説に出てきたあるセリフを引用しておこう。
「本を読みすぎるというのは危険なことかもしれないですね。」