★マイクル・コナリー『ダーク・アワーズ』講談社文庫

ずっと新刊が出るのを待ちかねて読んでいたマイクル・コナリーだが、バラード&ボッシュの『鬼火』、ジャック・マカヴォイの『警告』が自分としてはぜんぜんダメで、とうとうマイクル・コナリーも失速してしまったかと思ったのだけれど、続くリンカーン弁護士の『潔白の法則』がやたらと面白かった。そうなると、最新刊のバラード&ボッシュの『ダーク・アワーズ』に期待していいものやらどうなのやら、ちょいと不安に思わざるを得なかったのだけれど、いざ読んでみると、いやあ、面白かった。大満足だ。

2人組による連続レイプ事件と、ギャングから足を洗った男が銃によって殺害された事件の2つの事件を同時に追いかけるレネイ・バラード。殺人事件で使われた銃の分析から、過去にハリー・ボッシュが担当した事件との繋がりが出てきたため、ボッシュもバラードの捜査を手伝うことになる。
ボッシュが年老いたことから、彼を主人公とした作品に無理が出てきたところで、レネイ・バラードという若い女性を主人公にして、その指導者としてボッシュを位置づけたことでシリーズが再び息を吹き返したといったところか。

しかも、新型コロナが蔓延し、トランプ大統領によって国内が分断されたアメリカが舞台となっており、警察組織もさまざまな要因から腐敗しているという状況までが盛り込まれている。かつて、似たような状況からボッシュは警察組織を飛び出して私立探偵になったりもしたのだけれど、はたしてバラードの方はこれからどうなるのか。正直、警察組織を飛び出した瞬間にボッシュのシリーズはテンションが落ちてしまい、警察に復職することで再び盛り上がったのだから、バラードが警察組織を飛び出すという展開にはもっていかないと予想しているのだけれど。

いずれにしても、このレベルの作品を読ませてくれるのだったら、まだまだマイクル・コナリーを読み続けることになりそうだ。