★消えゆく燈火

 東京国際映画祭にて香港映画『消えゆく燈火』を観る。

 香港という街をあれほどまでに魅力的にしていたネオンが法律によって規制され、いまではあらかた消え失せてしまっているのだという。長いこと香港に行っていないので、ぜんぜん知らなかった。
 そのネオン管を作る職人のサイモン・ヤムが亡くなり、妻のシルビア・チャンと弟子のヘニック・チョウは、なんとか工房を維持して、サイモン・ヤムが最後に手がけようとしていたネオン看板を仕上げようと駆けずり回る。
 一方、母親がいつまでも亡き夫にこだわりつづけていることにいらだちを隠せない娘のセシリア・チョイは、オーストラリアへの移住を決めているのだけれど……。
 失われゆくものに対する哀惜の念が、あまりにも切ない。そして、いまや失われようとしているのは、ネオンサインだけではなく、香港そのものが失われようとしているのだという現実が、二重に胸に迫ってくる。
 そして、シルビア・チャンが実にいい。もういい歳なんだけど、さりげなく可愛いんですよ。ほんとにもう、素晴らしい女優だと、それしか言葉が出てこない。

 上映終了後にゲストを迎えてのQ&Aがあったのだけれど、広東語を日本語に訳して、それを英語に訳してというステップにどうしても時間をとられてしまうのがとても残念。
 そして、会場が六本木から有楽町に移ったことで、ゲストと接するスペースがなくなってしまったのも残念。東京国際映画祭では、毎年のようにゲストのサインをもらっていたのだけれど、これからはそういう機会もなくなってしまいそうだ。