★岡本綺堂『鎧櫃の血』光文社文庫

 岡本綺堂『鎧櫃の血』光文社文庫を読了。


 「三浦老人昔話」12話に、テイストの似た6話を収録したもの。「半七捕物帳」と違ってミステリ的な要素はなく、また綺談というような要素も希薄だ。「昔はこんなお話がありました」というさらりとした話が多く、こういうのを巷談というのだろうか。
 いずれにしても、綺堂の語り口がまったく古びていないのは驚異というしかない。いまの小説家が書いたものと言われても、まったく違和感がないのだ。大正に書かれた小説なのに、まったく古さを感じさせないのだ。このことについては、本当に読むたびに驚かされる。